大学留学の相談

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国際文化会館のM洋専務理事にAさんを紹介すると、Mさんは『半地球』という自著の写真集を見せてバングラデシュの風物がいかに豊かに映ったが説明して下さった。
バングラデシュの経済学者に、貧困撲滅政策に関する質問が集中する。
翌朝、「バングラデシュは豊かだ、という人にふたりも出会うなんて、イギリスでも経験しなかった一日でした」とMさんは話していた。
Mさんの専攻分野は、海外に出稼ぎに出る労働者に関する研究である。
イギリスのサセクス大学に出した博士論文も、外国人労働者問題を主題としている。
まず、イギリス社会の一員として定住しようと努める、バングラデシュからの移住労働者の実態調査をおこなった。
次に、同じイスラム教徒として重要な基幹産業を任されていても、契約期間が終われば帰国することを希望する、アラブ産油国への出稼ぎ労働者の調査である。
最近では、在留資格がなくても、就労資格がなくても、社会保険などに加入できなくても、病気になって診療を受ける手立てがなくても、高賃金に引き寄せられて来る在日バングラデシュ人労働者とのインタビューを精力的に続けている。
バングラデシュの豊かさは、日本の三分の一強の国土の農林水産物で、ほぼ日本と同じ規模の人口を養っている事実が、端的に示している。
日本か世界一の農産物輸入国であるのとは逆に、バングラデシュの主要輸出品目は、大地と海の生産物である。
海に囲まれている『豊かな』はずの日本が、「貧しい」はずのバングラデシュから水産物などを供給してもらい、貴重な動物性タンパク源にしている。
私たちが、農林水産物の輸入のあり方を考えなおす必要はないだろうか。
一九八一年の人口調査の結果をみると、成年男子(二〇歳)の平均余命は四八年強であり、同世代の日本人と比べて八年以内の差にすぎない。
しかもこの差は急速に縮小しつつある。
他方、日本人一人あたりの医療費は、バングラデシュの約二〇〇倍である。
病室に隔離され、過剰な末期診療を受ける日本人と、社会生活のただなかで生涯をまっとうするバングラデシュ人と、どちらが豊かといえるだろうか。
親族や友人の祝福を受けながら、安心して子どもを生み育てられる社会のほうが豊かではないか。
Mさんによると、『バングラデシュからの出稼ぎ労働者は、寸刻を惜しんで働き、日本で稼いだ金を故国に持ち帰り、家族や地域の親密な交遊に加わる夢を描いているそうだ。
金は得られるが、友人を作れない日本では困難な夢が、バングラデシュに帰国したのも実現する。
ならば、本当の豊かさとは会いたい人に会える世界ではないだろうか。
小学校に上がる前、ご飯を食べたあと、すぐ寝ると牛になるよといって、祖母に叱られたことがある。
なぜ牛になるのかわからないけど、ひどく怖かった。
もしも牛になったら、どうしよう。
人間に戻るには、どうすればよいのだろうか。
子どもなりに、真剣に悩んだことを覚えている。
しかし、怖かっただけではない。
閻魔さまに舌を抜かれたり、地獄におちたりするのと違って、牛になる話には異形への憧れもあった。
今ここに存在しているものが、後に別のかたちをとって存在し続け、いつの日か再び元のかたちに戻る。
循環とはそういうものである。
自分が両親から生まれたように、成長すると子どもを育て、いつか祖父母のような老人になるだろう、と思うのは、ママゴト遊びをする年齢になれば生じる、自然な生活感情であろう。
人は循環性に対するある種の畏怖と憧憬とを、あわせ持って生きている。
インドやスリランカの農村で暮らしはじめると、村人は夕食を終えるとすぐに寝ることに気づいた。
たぶん、ランプの灯油を無駄にしたくないからだろう。
経済・調査をする職業上の立場から、そんなふうに解釈した。
職業意識を捨てて、子ども心にかえると、牛になるのが恐ろしくないのか聞いてみたくなった。
ほとんどの村人は、輪廻転生を信じていた。
人の生涯は、自分以外の何者かの計らいで、循環性の輪につながれているというのである。
インドでは、人間の数より牛の数のほうが多い。
牛になることは少しも怖くない。
多くの村人は、なれるものなら来世では牛になりたいという。
農家にとって牛はほとんど家族の一員である。
寄宿先の家族が親戚の結婚式に出かけるので、牛の世話を頼まれたことがある。
そばに大型家畜が一頭いるだけで、一人暮らしにはない落ち着きが生まれる。
「インド人は牛を食べなさい」と勧告する外国人の経済学者や栄養学者が、いまだに後を絶たない。
けれども、インドの人たちは、牛肉を口にするどころか働けなくなった牛のために、養老院を建てる。
牛は、農耕や運搬に不可欠の動力を提供する。
牛乳製品は貴重なタンパク源である。
牛糞は燃料と肥料になる。
牛皮は揚水用の革袋や履物など、多目的に利用される。
人間よりも寿命の短い牛の生涯は、村の子どもたちにとって、リサイクルの教材になる。
循環の大切さを、牛が教えてくれるのである。
循環性の回復は、現代世界の環境破壊をとめるうえで、死活問題である。
循環性の永続は、一九九二年にブラジルでひらかれた国連環境開発会議の場だけでなく、今後の国際的な課題であることが広く認識されはじめた。
エネルギーや廃物や廃熱処理の限界を示したエントロピー理論の果たした役割は大きい。
オゾン層の破壊がもたらすであろう健康被害も深刻である。
熱帯雨林の伐採や、炭酸ガス濃度の上昇による地球温暖化は、人間生活にはかりしれない影響を残しそうである。
ネパールの山村でも、インド洋のマルデヴの漁村でも、地球規模での環境問題は、ほとんど話題にならない。
しかし循環性の永続は、日常生活のなかで大切にされている。
数千年にわたる焼畑農業は、循環性の回復に対する細心の注意なしに、存続できなかったはずである。
珊瑚礁の漁業に従事してきた漁民は、永続可能な漁法の限界を心得ている。
ところが日本列島では、屋久島の縄文杉を枯渇させるまで、林野庁は林業の過剰開発をおこなう。
石垣島の珊瑚礁を死滅させるまで、農水省構造改善局の土地改良事業は赤土を流し続ける。
新聞やテレビの報道は、くり返し循環性の回復を強調している。
乍野党を問わず、環境派の政治家も多い。
しかし、私たちの暮らしはどうか。
循環の永続性からほど遠いゴミの山を作っている。
OECDの海運統計によれば、日本は世界の海運貨物の約三割を運び込み、その九分の一しか輸出しない二九九〇年)。
循環性を失った琵琶湖や諏訪湖は、瀕死状態である。
寝る時間を惜しんでまで働くようになった私たちは、牛に生まれ代わる畏怖も憧憬も失ってしまったのであろうか。
国際化は、現代の流行語である。
意味不明確のまま使われている。
文脈から何となく見当がつく、あいまいな言葉だから、気軽に用いる。
だから、流行語になる資格があるのかもしれなし流行語になる前の語義は、明瞭であった。
たとえば、「スエズ運河の国際化」のように使われる。
エジプトにあるスエズ運河を、イギリスとフランスとが共同管理した事例である。
この用語法には、ほとんど誤解の余地がない。
使う場面も限られていた。
これを自治体の流行語である「地域の国際化」にいい換えてみればどうだろう。
たとえば、長野県の国際化を、A国とB国とに共同管理される話題とは、誰も考えない。
流行語では、何を意味しているのか。

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